カテゴリー別アーカイブ: 鬼平犯科帳

粋とは程遠く

一本うどん 一本饂飩 鬼平犯科帳 ビストロ・アニメシ
以前ビストロ・アニメシでは、鬼平犯科帳に登場する一本饂飩を作成しました。

親指ほどの太さのうどんは、作るのも食べるのもひと苦労!
大きなお鍋を持ちだして、汗をかきつつせいろでうどんを蒸すと気分はまるで職人さん。

出来上がりの味は、当ビストロの腕が足らずイマイチでしたが、とても楽しい回でした。

あまりにも太いので、芯まで柔らかくするために苦戦したものです。
せいろで蒸す・鍋で茹でる・蒸してから茹でるという方法を取り食べ比べをしましたが、実は他にも挑戦していました。

その方法とは、電子レンジ。

「シリコンスチーマーに入れてチンしたら、いけるんじゃないか」

そんなスタッフの一言により実践された、電子レンジ版がこちら。
DSC_0224
「バボンッ!」という音と共に出来上がったそれは、もはやうどんとは呼べない代物でした。

ブツブツで妙に艶々で‥
「これは失敗だ‥」と思いつつも口に含んでみると、びっくるするほどカッチカチ。

「これ、茹でてすいとんに出来ますかね‥?」という案も出ましたが、今のところ冷凍庫で眠っています。

どなたか、カッチカチになったうどんの活用法をご存知でしたらお教え下さい。

豊島屋の一本饂飩 後編

前篇の「親指ほど太いうどん!?」の巻をお読みでない方は、まずはコチラから!

~茹でるだけじゃ、物足りない の巻~

麺を寝かせて一日経過したところで、いよいよ茹でにかかります!

037
鍋にたっぷりのお湯入れ、沸騰したところで麺を投下。

040
まるでうどんとは思えない太さ。
底にくっつかないように、こまめに箸でかき混ぜます。

045
芯まで茹で上がるには、一体どのくらいかかるのでしょう?
とりあえず1時間、吹き零れに注意しつつ茹でることに。

茹で上がるにはしばらくかかりそうなので、その間にうどんつゆを作ることにします。

【用意するもの】
002
醤油、酒、水、みりん、昆布、鰹節

020
そしてお砂糖

008
昆布はあらかじめ水に浸しておきます。
火にかけて、沸騰したら昆布を取り出します。

010
続けざまに鰹節を入れて2~3分火にかけます。

013
火を止めて粗熱をとったら、ざるで出汁を濾します。

014
だしがらを絞って水気を切ります。

018
取れた出汁は鍋に戻して火にかけます。
出汁が沸騰したら、みりんと酒を入れてアルコールが飛ぶまで一煮立ち。

024
アルコールが飛んだら、醤油とお砂糖を加えます。

028
材料が全て溶けきったら、火を止めて粗熱を取ります。
粗熱が取れたら、ボウルに移して冷蔵庫で冷やします。

029
だしがらは、時間がある時は捨てずにふりかけを作ると無駄なしです。

うどんつゆが出来上がったところで、気になる麺の茹で具合を確認。

046
写真は湯で時間30分のもの。
箸でちぎって中をみると、まだまだ固いです。

おそらく麺が茹で上がる頃には、うどんつゆはキンキンに冷えていること間違いありません。
薬味の準備もとうに終わり、果てしない湯で時間に暇を持て余した我々。

せっかく時間があるのならば、とある実験を試みることにしました。

そばせいろ

実験に使うのは、この「せいろ」。
作中の一本饂飩の説明に、「五寸四方の蒸篭風の入れ物‥」というくだりがあります。

江戸時代、お蕎麦は蒸して提供されていました。
蕎麦粉につなぎを使っていなかったので、茹でると千切れてしまうのが理由のようです。

今ではつなぎを使ったりと茹でても千切れないようになり、蒸す文化はすっかりなくなりました。
そして、蒸篭を使って蒸していた頃の名残が、この「せいろ」なのです。

うどんは小麦粉なので、茹でても千切れません。
蕎麦とは違い、おそらく昔から茹でていたと予想されますが、それはあくまで普通のうどんの話。

我々が作るのは一本饂飩なのです。
芯まで茹で上がるのに相当の時間がかかる一本饂飩、その製法は謎に包まれています。

長時間茹でるだけでは、表面がめくれたり膨らんだりと、あまり美味しくなさそうな気もします。
では、いかにしてしっかりした形で加熱していたのか?

わざわざ「蒸篭風の‥」と書かれているからには、もしかして蒸していたのではないかという疑問が生まれたのです。

032
思い立ったが吉日ということで、さっそく蒸す用意をします。
大鍋にお湯をはり、蒸し器を設置。

033
蒸し器の上にせいろを乗せます。
せいろだけでも蒸せますが、高さがないので蒸し器の上に乗せています。

034
濡れ布巾を蓋に被せて、蓋をします。

今回は鍋が大きいので蓋も相当なサイズ。
ということで、100円均一で布の薄いバスタオルを購入しました。

048
蓋をしてしばらくお湯が沸騰させ、鍋の中に蒸気を充満させます。

051
麺はあらかじめとぐろを巻かせておきます。

052
熱々のせいろに麺を乗せます。
蒸気が出ているので、火傷には十分気をつけます。

054
蒸気が逃げないようすばやく蓋をします。

あとは茹でうどんと同じく、芯まで熱が通るように長時間じっくり蒸します。

049
蒸しうどんが落ち着いたところで、茹でうどんの状況チェック。
茹で上がりを見る為に、キッチンばさみで端を切ります。

056
60分経過したところ。なんとか芯まで茹で上がりました。
しかし、長時間茹でたせいで表面がドロドロしてしまいました‥

063
ザルにあけて水で冷やします。
表面のぬめりを手で取るように丁寧に洗います。

064
麺が硬くて、これではとぐろが負けない!
仕方ないので、とにかく水で麺を引き締めます。

麺が太いので、芯まで冷えるのに10分はかかります。
氷水でよく冷やしてあげます。

075
一方の蒸し饂飩はというと、表面が崩れるでもなく、つやがあって美味しそう。
茹でうどんは60分茹でても硬めだったので、80分蒸しました。

080
蒸しうどんも、茹でうどんと同じく水でぬめりを取ります。

081
左が蒸しうどん、右が茹でうどん。
蒸した方が黄色がかった麺で、きゅっと引き締まっています。
茹でた方は白っぽく、茹でている間に麺に亀裂が入ってしまいました。

099
亀裂が入った茹でうどん、水で冷やすうちに切れてしまいました。
そして試しに食べてみると、外側がやけに柔く中が硬いというイマイチの出来。

ということで、今回はの出来上がりのメインは蒸しうどんに決定。

083
蒸しうどんは仕上げに10分ほど茹で上げます。

086
茹でうどんと同様に、じっくり芯まで冷やしたら‥

101
よく水を切り、せいろに乗せます。

鬼平犯科帳の食事 鬼平の世界に出てくる食べ物 ビストロ・アニメシ 江戸の食文化 一本うどん 一本饂飩 豊島屋のうどん
ついに完成!
白蛇のようにとぐろを巻く風貌に、心踊ります。

102
あとはこれを、箸でちぎりながら‥

106
柚子や擦胡麻、ねぎなどをあしらった、濃い目のつゆにつけて頂きます。

ひとくちパクっといくと‥
モッチャモッチャモッチャモッチャモッチャ‥

「うどんは、普通の太さのものが一番」

今回の感想は、これに尽きます。

今の世になくなってしまった一本饂飩、豊島屋の秘密製法でしか美味しく出来なかったのでしょう。
我がビストロが挑戦するには力不足だった‥

白玉粉で作ると、もう少し食べやすい出来上がりになるかもしれません。
豊島屋の職人さんは一体どうやって作ったのか、謎の残るうどん。

そんな、江戸っ子のとっておきの一品なのでした。

■□■□ 今回使用した調理アイテム ■□■□

豊島屋の一本饂飩 前編

~親指ほど太いうどん!? の巻~

鬼平犯科帳〈1〉 (文春文庫)

今回再現するのは、時代小説の代表「鬼平犯科帳」に登場する一風変わったうどん。

タイトルにもある「鬼平」こと主人公の長谷川平蔵は、幕府の長官。
作中では、江戸の街に現れる盗賊とそれを取り締まる平蔵の姿が描かれます。

どこか憎めない小物泥棒や、無情な事件を起こす凶悪な盗賊など、一言に事件と言ってもその内容は様々。
江戸の舞台で繰り広げられる物語は、何時の世も変わらない人間の儚さや汚れ、ありとあらゆる姿がありのまま描かれています。

気づけば作品の世界にどっぷりとはまってしまうこと間違いなし。
そして作品を読んでいるうち、当時の生活にも興味をそそられます。

特に食事に関しては、料理名をあげたら限りがなくなるほど。
白魚と豆腐の小鍋だてに、わけぎと木くらげ、生鰹節‥と、古くから食卓に上がるものだからこその魅力があります。

蕎麦を啜る喉越しや、魚の煮付けの甘辛い香りは、誰しもが感覚的に思い起こせるはず。
作中では、そんな日本人の心をくすぐる小粋な描写が度々登場します。

今回挑戦するのは、そんな鬼平犯科帳の中でも一番のインパクトを持つ一品。

一本饂飩、ただのうどんではないのです。
親指ほどの太さで、とぐろを巻いたうどん‥それこそが一本うどんなのです。

鬼平犯科帳 53 (SPコミックス)

漫画化された鬼平犯科帳にも、この一品うどんは登場します。
作中では、その太さ故にすすらずに箸でちぎりながら咀嚼する姿が描かれています。

味は勿論のこと、是非とも一本の太いうどんを見てみたい!

ということで、いざ調理スタートです。

うどんの麺は、以前作成した耳を澄ませばのおじいさんお手製鍋焼きうどんと同じ行程です。詳しい作り方はコチラ

【用意するもの】
000
中力粉、塩、水
まずはうどんの作成。

014
小麦粉に塩水を注ぎ、混ぜあわせます。

017
水と周りの粉を合わせるようにして、すばやく混ぜます。

022
粉を両手で持ち上げては落とし、持ち上げては落とすイメージで。
大きなダマがある場合は手でほぐしてあげます。

023
粉がそぼろ状になって、特に目立つ大きさの塊がなくなればOK。

026
固さをチェックするために、手のひらに写真の量をとり、握り締めます。

「ひやご飯を握りつぶした時と同じくらい」や、「ちょっと硬い耳たぶ」が感覚の目安です。
硬すぎず、柔らかすぎなければ問題ありません。

027
粉をひとつにまとめて行きます。

030
最後に体重をかけて生地を完全にまとめたらOK。

032
丈夫なビニールに入れて、いよいよ足で捏ねます。

035
床に紙を敷き、清潔な靴下で生地を踏んで行きます。

044
生地が伸びたら一旦取り出します。

045
平たくなった生地を、畳んで‥

046
畳んで‥

046
三つ折りにします。

049
両端を折り込み、正方形に。

050
最後に上から体重をかけて、生地が開かないようにします。

052
そして再度ラップに入れて、同じように生地を伸ばしていきます。
出来あがったらビニールから取り出し、先ほどと同じように折りたたみます。

072
生地が開かないように、今度は全体重をしっかりかけておきます。

073
この状態で20分ほど生地を寝かせます。

037
20分経過。包丁で4~5等分します。

包丁で切り分けたら、ここからが本番!
通常、うどん作りでは次にこの生地を平たく伸ばしますが、一本うどんはそうしません。

039
切り分けた生地の断面を見ると、折りたたんだ時の形の名残があります。

040
この名残をそっとほぐして、折りたたむ前の状態に戻します。
くっついて広げにくい場合は、打ち粉をまぶしながら行うとスムーズです。

041
生地を転がして、適当な太さ・長さになるまで伸ばします。

043
伸ばし終えたところ。

044
ちょうど親指と同じくらいの太さです。
加熱すると膨らむので、少し指より細くても大丈夫です。

045
伸ばし終えたら、全体に打ち粉をまぶします。

047
手で撫でるようにして、全体に馴染ませます。

051
あとはこれを密閉できる容器に入れて、最低でも一晩冷蔵庫で寝かせます。

本来なら生地を伸ばして切るところを、大きさの都合で分解して伸ばす試みをしてみました。
今のところ、太さも長さも理想に近づけていますが‥

果たしてこの行いは、出来上がりの食感にどう影響するのでしょうか?

そもそも、この太い麺は果たして中まで茹で上げるのか!?

次回、「茹でるだけじゃ、物足りない」の巻に続きます。

■□■□ 今回使用した調理アイテム ■□■□